溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
──ピンポン。
玄関のチャイムが鳴る音がした。
誰か来たのかなと思っていると、突然玄関が開き、どたどたと何人かが上がり込んできたような乱暴な足音が。
『なんだろう?』
『……わからない』
ランドセルを下ろし、二人で階下の音に耳を傾ける。
すると、がしゃんとガラスが割れるような音や、母親の悲鳴が聞こえてきた。
『ママ!?』
『しっ』
部屋を出ていこうとした私をお兄ちゃんが止め、口に指を当てた。
『静かにしていて。何かおかしい。俺が見てくるから、ひかりはここで待ってて』
そう言い、お兄ちゃんは音を立てないよう、そっとドアを開けて部屋を出ていく。
いったい何が起きたの?
子供の自分には想像もつかない。
けれど、なにかとてもよくないことがこの家に降りかかってきたのだということは、本能が察知していた。
『やめろ。やめろ、うわああぁぁ……』
父親の低い悲鳴が響く。
恐ろしくなった私は、耳をふさいでうずくまった。
そんな私の目の前に、ドアを開けてお兄ちゃんが戻ってくる。