溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
『お兄ちゃん……』
『黙って』
お兄ちゃんは部屋を見回すと、私の手をひき、クローゼットの扉を開けた。
その中に二人で入るように指示すると、中から注意深く扉を閉める。
『いい?絶対に声を立てちゃダメだ。俺がいいと言うまでは』
階下で何が起きたのかは、相変わらずわからなかった。
けれどすっかりおびえて震えていた私は、お兄ちゃんの言うことにこくりとうなずく。
クローゼットの中は暗く、日の光は入って来ない。
防虫剤のにおいにむせそうになっていると、お兄ちゃんはなぜかクローゼットの中にかけてあった私のワンピースに手をかけた。
『どうするの?』
それは母親が七五三のために買ってくれた、よそいきのワンピースだ。
また違う行事でも使えるようにと、実際の自分の背丈よりも少し大きめになっている。
お兄ちゃんは私の質問には答えず、無言で服を脱ぎだした。
そして、そのワンピースに袖を通した。