溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「どう……して」
こんな重大な記憶を忘れてしまっていたんだろう。
私の本当の名前は、本庄ひかり。
父と母は、19年前のあの日に殺された……。
悲惨な光景が網膜に焼き付いてしまったようで、なかなか離れてくれない。
誰が、あんなひどいことを?
「誰が、パパとママを殺したのっ!?」
私の両親がいったい何をしたっていうの。
どうして、あんなむごい殺され方をしなければいけなかったの。
気づけば、涙が溢れていた。
「はあ? 今さらなんだい。まさか、本当に記憶をなくしていたなんて言うつもりじゃないだろうね?」
男たちの輪の外にいた国分議員が、呆れた顔で私を見下ろす。
そして、こう言い放った。
「お前は、父親の仇を討つために、SPになったんだろう? SPになれば、親父に近づけると思ったんだろう?」
「は……」
「とぼけるのもいい加減にしろ」
どういう意味か問う暇もなかった。
私を囲んでいた男の一人が、後ろで組んでいた手に持っていた木刀をかまえ、振り上げた。