溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「どう……して」


こんな重大な記憶を忘れてしまっていたんだろう。

私の本当の名前は、本庄ひかり。

父と母は、19年前のあの日に殺された……。

悲惨な光景が網膜に焼き付いてしまったようで、なかなか離れてくれない。

誰が、あんなひどいことを?


「誰が、パパとママを殺したのっ!?」


私の両親がいったい何をしたっていうの。

どうして、あんなむごい殺され方をしなければいけなかったの。

気づけば、涙が溢れていた。


「はあ? 今さらなんだい。まさか、本当に記憶をなくしていたなんて言うつもりじゃないだろうね?」


男たちの輪の外にいた国分議員が、呆れた顔で私を見下ろす。

そして、こう言い放った。


「お前は、父親の仇を討つために、SPになったんだろう? SPになれば、親父に近づけると思ったんだろう?」

「は……」

「とぼけるのもいい加減にしろ」


どういう意味か問う暇もなかった。

私を囲んでいた男の一人が、後ろで組んでいた手に持っていた木刀をかまえ、振り上げた。


< 195 / 279 >

この作品をシェア

pagetop