溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
11.私はSP
「お前が謝ることなんて何もない」
ぼやけた視界の向こうで、新城さんの声が聞こえる。
「お前、どうやって……」
誰も入ってくるはずがないと思っていたのだろう。
国分議員が、戸惑った様子で新城さんを指さす。
「ドアの前の見張りを倒したに決まってんだろ。紫苑を返せ」
鋭い目線で国分議員をにらみつける新城さん。
すると私を囲んでいた男たちは、さっと前に出ていき、議員は逆に後ろに下がってきた。
「俺たちはあんたのSPだぜ。俺たちの監視をかいくぐって何かしでかそうなんて、無理に決まっている」
そう言いながら、新城さんの後ろから矢作さんが現れた。
「トイレに行くって言って、それきりだったもんな。単に用を足しているにしては時間が長すぎた。探すに決まってるだろ」
と、矢作さん。
「話は聞かせてもらった」
新城さんが一歩前に出る。
「紫苑。お前は思い出したのか? あの日のことを」
彼は他の人間を無視し、私だけに語りかけてくる。