溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
私は必死でうなずいた。
「でも、どうしてあんなことになったのかは、何も──」
誰が両親を殺したのか。
私はどうして一ノ瀬紫苑として、記憶をなくしたことに疑問を持たずに生きてきたのか。
「俺が簡潔に教えてやる」
新城さんはそう言うと、ぎらりと光る瞳で国分議員を見つめた。
「お前の本当の両親は、当時内閣総理大臣だった国分の秘書をしていた。けれどあの日、国分に……正しくは、国分の差し向けた殺し屋に、殺されたんだ。一家心中を装ってな」
「なっ……」
私の父親は国分外務大臣の、元秘書だった。
そして、一家心中を装って殺された……。
脳裏に、ナイフを突き立てられた父親の死に顔が甦る。
「どうして……どうしてそんなひどいことを!」
国分議員をにらみつけると、彼はわずかに眉をひそめただけだった。
答えない彼の代わりに、新城さんが口を開く。