溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「こいつの父親は、汚職事件を起こした。もちろん、公にはされていないけどな。総理大臣だった当時、国分外務大臣はとある企業から、賄賂を受け取った」
「賄賂を……」
「それがマスコミにばれそうになった。そして……」
ごくりと唾を飲み込む。
「その罪を、すべてお前の父親……つまり、秘書になすりつけることに決めた。お前の父親は、それをなんとなく察し、秘書を辞めようと思っていた。しかし、それはできなかった。結局は国分外務大臣にとって都合の悪いことを話せないように、消されたんだ」
そんな。
あまりのことに、声も出なかった。
「どうしてそれを……」
「俺もあの事件に関わったひとりなんでな」
そう。新城さんは私を助けるため、あの日私の服を着て私のふりをし、刺客を引きつけてくれた。私の命を守ってくれたんだ。
「忘れられるわけがなかった。警視庁に入庁したのは、当時の事件を洗いなおすため。色々な人脈を駆使して、やっとここまでたどり着いた」