溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「はあ……暇だねえ」
急いで現場に急行した私たちを待っていたのは、突然の休憩時間だった。
それもそのはず、今は国会の常会期間。
本会議中は、正直やることがない。
元々議事堂に配置された警備員やSPがいるからだ。
私たちは、国分議員が会議場を出てくるまで、いきなり暇になってしまったのだった。
一般の見学者も座れる休憩スペースの片隅で、ぼんやりと座っている私たち。
どうやら警備の人と別の要人のSPたちに、私たちが来ることがうまく伝わっていなかったらしい。
確認するから待機しろと言われて、そのまま待ちぼうけを食っている。
「元総理は議事堂に着く前に襲われたのか。こんな明るいうちからテロリストが動くなんてな」
「夜の方が警戒が強いからですかね。それにしても、人を呼びつけておいて仕事がないとか、ひどいっすよ」
大西さんが両肘をテーブルにつき、グーにした手で頬を支える。
なんか、乙女みたい。確実に私より可愛い。
「そのうち議事堂の見廻りでも仰せつかるだろ。大西、今のうちに昼食って来いよ」
ひとたび警護が始まってしまえば、飲食もトイレも、自由にはできない。
新城さんの言葉に、大西さんはうなずいた。