溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「ちょうど昼時ですしね。ささっと済ませてきますわ」
いくら暇でも全員が現場を離れるわけにはいかないので、一人ずつ休憩に行くのは当たり前。
けど、大西さん!お願いだから、新城さんと二人きりにしないでください!
「ゆっくりでいいぞ」
……ちょ、新城さん!余計なこと言わなくても!
と思ったけど、口には出せなかった。
「何か飲む?」
二人きりになった途端、新城さんが聞いてくる。
「いえ、お手洗いに行きたくなると困るので」
本当は借りを作りたくないだけなんですけどね。
「大丈夫だろ。あと3時間は出てこない」
新城さんは時計を見ると、すっと立ち上がる。
そして自販機で子供が飲むようなパックのジュースを買ってくると、一つ私に差し出した。
「野菜ジュースと飲むヨーグルト、どっちがいい?」
どういうチョイスだ……たとえ利尿作用があっても、コーヒーとかお茶が良かった。
いや、曲がりなりにもこの人はSP。体が資本だから、地味に気を遣っているのかも。
「では、野菜で……」
「ん」
「ありがとうございます」
あまり意固地になるのも良くないだろう。
私は素直に、ジュースを受け取った。
新城さんは座りなおすと、パックにストローを刺しながら話しだした。