溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「すごい!」
なんとか勝利をおさめた新城さんに駆け寄る。
「壁渡りって。忍者かお前は」
後ろから、矢作さんのホッとしたような、それでいて呆れたような声が聞こえてきた。
「おい、バカ息子。紫苑の手錠の鍵を渡せ」
さすがに息を荒げた新城さんがつめよると、アホ息子は情けない顔で首を横に振った。
「も、持ってないんだ。俺じゃない。その鍵を持っているのは……」
「私です」
ドアの方から声がして、私たちは一様に振り返る。
そこには、秘書の三田さんがいた。
その姿を認めると同時、ドオン!と、何かが爆発するような轟音が聞こえた。
「なに!?」
床が地震のようにぐらぐらと揺れ、立っているのもやっとだ。
国分邸のどこかで爆発が起きたのか?
「昨日、坊ちゃん……いえ、そのバカ息子さんにお預かりしました。きっとこれがその鍵でしょう」
三田さんはこんな事態だと言うのに、落ち着いた顔でこちらに近づく。
そして握っていた手のひらを私の前で開いて見せた。