溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「一ノ瀬さんの身辺調査をいいつけられた私は、愕然としました。まさかあなたが、あの時行方不明になったお嬢さんだったとは。もっと早く助けられなかったことをおわびしたい」
三田さんは私に頭を下げた。
だから今朝、私の様子を見に来てくれたんだ。
そして、家から出ぬようにと忠告してくれた。
「でも、どうして……」
「わたしが秘書見習いだったとき、上司だった本庄さんはとてもよくしてくれました。いつかその恩に報いなければと思っていた」
そうか。私は覚えていないけれど、もともと国分のもとで働いていた父と三田さんは、仕事上の付き合いがあったのか。
「まさか、あなたにテロリストの容疑がかかるとは。ああでも、良きお仲間がいてくださってよかった」
三田さんは新城さんたちを見て、ひとりでうなずいた。
そして、アホ息子の方を見る。
「私は、国分家の人間を一掃します。そうしなければ、私の家族が殺されてしまう」
「そんな……」
「もちろん私も、ここで灰になる覚悟です。家族には保険金が残る。命も、これからの未来も」
三田さんは震える手で、ピンに指をかける。