溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「やめて、三田さん!」
「お嬢さん、どうかいつまでもお元気で……」
三田さんは恐怖で動けないアホ息子の方に近づきながら、とうとうピンを抜いてしまった。
「バカ野郎!」
走りだしたのは新城さんだった。
彼は三田さんの手から手榴弾をもぎとると、窓に向かって投げた。
──ドオン!
窓にぶつかった手榴弾が爆発する。
傍にいた矢作さんが、降り注ぐ窓ガラスや壁材から守るように、私を抱きかかえて伏せた。
「火が、火が……!」
アホ息子の悲鳴が聞こえた。
慌てて体を起こす。穴の開いた窓の辺りの壁からカーテンに火が付き、焦げ臭いにおいが漂い始めていた。
「逃げろっ、紫苑、矢作! そのバカ二人も連れてな!」
新城さんが駆け寄り、腰を抜かせていたアホ息子と三田さんを無理やり立ち上がらせる。
「行け、早く!」
「新城さんは?」
「この男たちを起こして、脱出させる」
彼が指さしたのは、のびているスーツの男たちだった。