溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「なあ、紫苑。お前は今は“一ノ瀬紫苑”で、人を守るSPだよな」
打たれて熱を持った頬を優しくなでながら、彼が私をのぞきこむ。
言い聞かせるような口調は、優しかったお兄ちゃんを思い出させた。
「SPなら、どんなことがあってもマルタイを見捨てるな。どこまでも守れ。それがお前の使命だ」
そう言われて、ハッとした。
そうだ。私は、SP。人を守るのが、私の仕事だ。
「……はい……」
「よし、行け」
でも。
涙が溢れる。
ここで別れてしまったら、もう会えないかもしれない。
そんな気持ちを読み取ったのか、一瞬眉をひそめた新城さんが、力任せに私の肩を抱きよせる。
そして、ちょんと触れるだけのキスをした。
あのときは、できなかったキス。
あの頃の私たちは、あまりにも幼すぎたから。