溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
12.本当の再会
初めて新城さんに会ったのは、6歳のときだった。
近所の空き家がリフォームされ、そこにある一家が引っ越してきた。
『引っ越してきました、新城です。よろしくお願いいたします』
若く美しい夫婦が挨拶にやってきた。
その後ろには、隠れるように誰かがいた。
同じように母の後ろに隠れた私は、それでも興味津々で、顔だけをちらりと出してみた。
『娘のひかりです。近所に同じ年頃の子がきてくれて嬉しいわ。よろしくお願いいたします』
母に促され、私は小さな声で挨拶をした。
『こんにちは』
『あら、可愛いお嬢さん! ほら聖、こんな小さな子も挨拶できるのよ。ちゃんと出てきなさい』
お母さんにぐいと手を引っ張られ、やっと彼は姿を現した。
『……こんにちは。はじめまして』
単に恥ずかしかっただけなのだろう。
少し年上だと思われる彼は、はにかんだ笑顔を見せた。
その笑顔を見た瞬間、私は胸の奥で何かがもぞもぞ動くような、変な感覚を覚えた。
言うまでもなく、それ以来私は“こうきお兄ちゃん”のことが大好きになってしまった。
今思えば、あれが私の中に初めて芽生えた恋心だったのだろう。
私はひとめで、新城さんに恋をしたんだ……。