溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
屋敷から脱出するまでの間、私の脳裏にはそんな新城さんとの思い出が、繰り返し浮かんでいた。
そして二人を抱えた私たちがやっと脱出すると、横のバカみたいに大きな建物からもバタバタと誰かが出てきた。
おそらく、私たちがいたのは離れの方で、あちらは母屋なのだろう。
「高浜さん! 大西!」
矢作さんが声を上げる。
すっかり日が暮れてしまっていたけど、屋敷を燃やす炎に照らされ、なんとか彼らの姿を識別できた。
屋敷の周りには機動隊や救急隊員の姿も見られ、とにかく騒がしかった。
「矢作に一ノ瀬さん。それに国分議員。無事でしたか」
アホ息子は涙と鼻血のあとが、しっかりと顔に残っていた。
けれど高浜さんは、彼を無事と判断すると、大きくうなずく。
「こちらも、何とか外務大臣は守り抜いた」
屋敷の入口を、SPたちに守られた誰かが通り抜けていく。
おそらく、外務大臣だろう。
彼も生き延びたんだ……。