溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「行ってはいけません。共倒れになるだけだ」
高浜さんまで近寄ってきて、同じことを言う。
「じゃあ……じゃあ、高浜さん。あなたは、麻耶さんがもしこの中にいたら、放っておけますか。消防隊が来るのを、じっと待っていられますか」
そう言って見上げると、高浜さんはハッとしたように目を見開いた。
そして静かに目を閉じると、ゆっくりと首を横にふる。
「無理ですね」
「ちょ、高浜さん」
「麻耶がこの中にいたとしたら、俺は迷わず飛び込んでいくでしょう。そしてあなたは今、新城を助けるためにそうしたいと」
こくりとうなずくと、高浜さんは困ったような顔で苦笑した。
「では、仕方ありません。でも、一人では行かせませんよ」
「えっ?」
「俺も一緒に行きます。俺たちはチームですから」
高浜さんはそう言うと、辺りをきょろきょろと見回す。
そして、庭に水を撒くための蛇口を発見すると、ホースの先をにぎって水を出す。
それを自分の体に向けると、高浜さんはあっという間にずぶ濡れになった。