溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「からかうのはやめてください。私、小学校高学年から異常に背が伸びて、しかも女っぽくない顔でバスケ部の主将だったから、『ゴリ』ってあだ名がついてたんですよ。そんな私に一目ぼれなんて、信じられません」
一気に言い放って野菜ジュースを吸い込むと、新城さんは一瞬目を丸くして……次の瞬間、ぷっと吹き出した。
「はは、なんだそれ」
「何がおかしいんですか」
「だって、ゴリだってよ。いいじゃねーか、ゴリ。バスケ上手かったんだろうな」
ぐっ……しまった。こんなセクハラSPに過去の汚点を知られてしまった……!
「嫌です!できればミッチーか流川が良かったんです!」
「おお、ミッチーはかっこいいよな。3ポイントのな」
「そうそう、って……スラムダ○クの話をしているんじゃありません」
新城さんは笑いが止まらなくなったらしく、ジュースのパックを握りつぶしそうな勢いで全身を震わせている。
「でも顔は似てないよな。お前、綺麗だし」
笑いすぎて溢れた涙をぬぐいながら、新城さんが言った。
さりげなさすぎて、防御する暇がなかった私の胸に、その言葉が命中する。
言葉を失ってしまうと、新城さんはふと真剣な表情に戻った。