溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
その部屋は二階の奥にあり、私と高浜さんは、そこまでなんとか怪我をせずにたどり着いた。
「ここです」
手榴弾で窓が破壊されたことでもろくなったのか、剥がれ落ちた壁や天井の残骸が床に散乱している。
窓から吹く風で舞い踊る灰が目に入らないように注意しながら、部屋の中に目を凝らした。
「あそこです」
高浜さんが言うと同時に踏み出す。
そういえば、彼には透視能力があったんだった。
そのおかげで、煙の中にいる新城さんを見つけることができた。
「新城さん!」
高浜さんについていくと、床の上で倒れている新城さんを発見した。
彼はうつ伏せで、腰から下が瓦礫に埋もれている。
「……大丈夫。骨折はしていないようです。はがれた天井板が、良い感じに盾になってくれています」
彼の様子をじっと見ていた高浜さんが言った。