溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
ひざをついて彼の顔をよく見る。
茶色の前髪がかかったまぶたは閉じられていて、長いまつ毛はぴくりともしない。
ただ、倒れていたおかげで致死量の煙を吸わずに済んだのか、呼吸は規則的だった。
けれど、通常の呼吸より、だいぶ細い音がしている。
早くここから連れ出さなければ。
「新城さん、新城さん」
名前を呼んで、肩を叩いてみる。
けれど、返事はない。
「一ノ瀬さん、協力して瓦礫をどかしましょう。その方が早そうだ」
「はい!」
高浜さんの提案にうなずく。
立ち上がると、もくもくと立ち上る煙に、すぐに喉や肺がやられそうになった。
一番上にあった瓦礫を、高浜さんが抱き上げるようにして宙に浮かせる。
普通の人間にはまずできないことだろう。
「よいしょ!」
高浜さんはそれを注意深く横にどけると、次の瓦礫に取り掛かる。
私は自分で持ち上げられそうな瓦礫を、手当たり次第に放り投げた。
けれど。