溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「ごほっ、ごほっ……」
「高浜さん」
高浜さんが咳き込み始めた。
「すみません。さすがに、ごほっ、ごほ」
何か言いかけたみたいだけど、これ以上無駄な息を吸わないようにしたのか、単に咳き込んだからなのか、高浜さんはそれ以上言葉を発しなかった。
力を入れるとき、どうしても息を吸ってしまう。
そのとき、身長190センチ近い高浜さんは、人より多く煙を吸ってしまうのかもしれない。
あまり長引くと、私たちも危険だ。
それでも、絶対に新城さんを助けなくちゃ。
次の瓦礫を持ち上げようとした瞬間。
「……おん、紫苑……」
細く消え入るような声が聞こえ、ハッとする。
床を見ると、新城さんがうっすらと目を開けていた。
「新城さん」
「バカ、なんで戻ってきた。早く逃げろ……」
そういうと、苦痛のせいかぐっと顔をゆがめ、歯を食いしばった。
「なんでって。あなたを助けに来たに決まっているじゃないですか」
瓦礫を持ち上げるために腕に力を込める。
その瞬間、手のひらに鋭い痛みが走った。