溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
【side新城】
あの日俺は、ひかりの部屋のクローゼットから出ると、女装したまま殺し屋の前に出ていった。
先に階下で殺されたおじさんとおばさんを見ただけで、本当は息が止まりそうだった。
逃げたい。家に帰りたい。
しかし、逃げ道はない。それにひかりをこんなところに置いておくわけにはいかない。
俺はできる限りの勇気と知恵を振り絞り、自分がひかりのふりをして殺し屋たちの前に出ていくことを思いついた。
着替えをする俺を、ひかりは怯えながらも不思議そうな顔で見ていた。
どうか、うまくいきますように。
どうか、この小さなお姫様が、ずっと幸せでありますように。
引越しをして、孤独だった俺を慕ってくれたお姫様。
たまに母親と一緒にきみが遊びに来てくれることが、どれだけ嬉しかったか。
学校になじみ、新しい友達ができてからも、きみだけは特別だった。
『絶対に、また会えるから。約束するよ』
そう言い残し、俺は階下に降りていく。
階段には二階に上がろうとしていた殺し屋がいた。