溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
『君は……どこかであったことがあるかい?』
『助けてください。ひかりが、ひかりが……』
全身がまだ恐怖で震えていて、うまく言葉が出てこない。
『ひかりとは、もしや本庄ひかりちゃんのこと?』
おじさんが優しく訪ねてくれたので、俺は必死にうなずく。
『変な男が二人、突然押しかけてきて、おじさんとおばさんを殺した』
『なんだって』
『ひかりは、子供部屋に隠れています。お願いします、助けてください』
おじさんは戸惑ったような顔をしていたけど、なんとか俺の少ない言葉から状況を予測しようとしているようだった。
『きみは……まさか、ひかりちゃんのふりをしたの?』
うなずく。
『追いかけられたけど、隠れていたら、あっちに走っていった』
俺が指さした方を見て、おじさんは眉をひそめる。
『そうか。どうもありがとう。すぐに本庄の家に向かう。きみは家に帰りなさい』
おじさんは近くに待たせていた部下らしき若い男に、俺を預けた。
そして、自分の車に乗り込もうとする。