溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
『ああ、きみの名前を聞いておいてもいいかな』
『こう……新城聖です』
『聖? まさか、男の子か』
おじさんは初めてそのことに気づいたようで、部下らしき青年にタクシーを拾い、途中で着替えさせるように指示した。
『私は中河だよ。このことは、絶対に他人に話してはいけない。お母さんにもだ。途中で車に泥を跳ねられて、お詫びに着替えを与えられたとでも嘘をつくんだ。本当のことをたくさんの人に話すと、きみの命が狙われてしまうかもしれないから』
おじさんは早口で言うと、自分で車を運転して行ってしまった。
車は、まっすぐにひかりの家の方に向かっていった。