溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
そんなある日、学校から帰宅する途中、中川のおじさんと出会った。
彼はすぐ近くにあの時の車と部下を待たせていた。
俺の姿を見つけると、人の好さそうな顔で近づいてきた。まるで、俺とすれ違うのをまっていたように。
『やあ、新城君。あのときはありがとう。ちゃんと学校に行けているようで良かったよ』
『おじさん、どういうことですか。テレビも新聞も、嘘ばかり言ってる。それにひかりは、いったいどこへ──』
一気にまくしたてる俺に、おじさんはしっと自分の指を顔の前で立てて見せた。
『前にも言ったけど、君が真実を知っているということは、敵に知られては困ることだ』
そう脅され、口をつぐむしかなくなった俺に、おじさんは小さな声で続ける。
『ひとつだけ教えておくよ。きみのおかげで、私はひかりちゃんを保護することに成功した』
『保護』
『彼女はもう、安全なところで暮らしているよ。それはきみのおかげだ。きみが彼女を守ってくれた。礼を言う』
おじさんは子供の俺に対し、頭を下げた。