溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


『そんなの、いらない。ひかりは、どこにいるんですか』

『それは言えない。きみのことを信用していないわけじゃないが、敵は強大だ。居所を察知されるようなことがあったら、こんどこそ彼女は殺されてしまう』


そんな。

また会えると約束したのに。

ひかり、きみはいったいどこにいるの。


『俺が黙っていた方が、ひかりにとっていい』


確認するように呟くと、おじさんはうなずいた。


『そういうことだ。もう、彼女の行方を探さないでほしい。このことはすべて、忘れたふりをするんだ』

『そうしないと、ひかりも、俺も、俺の家族も危ない』

『きみは頭がいいね。全部説明しなくてもわかってくれる』


そんなことない。

俺がこれからとるべき態度はわかったけれど、どうしてこんなことになったのか、全然わからない。

まさかこんなふうに、引き裂かれることになるなんて。

涙をにじませた俺の頭を、おじさんが優しくなでる。

そんなふうにしてほしくない。

嫌がるように首をふると、おじさんは苦笑した。


< 245 / 279 >

この作品をシェア

pagetop