溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


『本当に、ありがとう。じゃあ……これを』


おじさんは俺に、名刺のようなカードを渡してきた。

そこには、電話番号が書かれていた。


『何度問われても、ひかりちゃんの居所を教えることはできない。けれどもし、敵に狙われるようなことがあったら、連絡してほしい。助けにくるから』

『……はい』


俺は力なくそのカードを受け取る。

するとおじさんはまた俺の頭をくしゃりとなで、車に乗りその場を去っていった。



ごめん。

ごめん、ひかり。

俺は、結局何もできなかった……。


忘れるなんてできない。

だからきみも、どうか俺を忘れないで。

いつかまたどこかで偶然出会えたら。

ううん、俺は大人になったら、絶対にきみのことを探し当ててみせるから。

あのクローゼットで交わした約束を、絶対に果たす。

いつか、必ず。


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