溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


昔の淡い初恋をきっかけにしたことは否定しようがない。

けれど、俺は思い出の中の“本庄ひかり”よりも、今目の前で生きている彼女を、とても愛しく思うようになっていった。

そんな中、篠田の捜査に協力し、国分親子を狙っているテロリストの黒幕が三田さんだということを知る。

もしや、三田さんも本庄さんと同じように国分に消されることを恐れているのではないか。

篠田も同じように考えたかはわからないが、あっちは三田さんの証拠を集めることより、国分の収賄の裏付けを優先させたようだ。

そうでなければ、三田さんがあそこまで思いつめるまでに、何か手を打てたはず。

とにかく、紫苑が自分で記憶を取り戻す前に、すべての真実を知っておきたい。

そう考えた俺は、あの古い名刺を取り出し、その電話番号に電話をかけてみた。

幸い、電話番号は変わっておらず、時間はかかったが、無事に中河のおじさんに繋いでもらうことに成功した。


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