溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
相手も、俺の名前をうっすらと記憶していたようだ。
俺は今の状況を説明し、紫苑が危機的な状況にあることを話す。
すると相手は、俺を総合病院に呼び出した。
公園で襲撃されたあとで手当てを受けた、あの病院だ。
『久しぶりだね。とてもいい男になったな』
再会したおじさんは、笑顔で俺を迎えた。
腹の肉はそのままで、頭髪が白く薄くなっていたが、それは間違いなく中河のおじさんだった。
『大人になったきみが、彼女を守りたいと思ってくれて、とても嬉しいよ。私はこの通り、とても歳をとってしまった。一ノ瀬も同じだ。誰か、秘密を話すに足る男が現れてくれないかと思っていたところだ』
小さな入院患者用の個室で、俺たちはそれぞれ小さな丸椅子に座る。
ベッドの上にはもちろん、入院患者はいない。
ただ、人目に触れることがない場所として中河さんに選ばれた部屋だった。