溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
そういうことだったのか。
これで、全ての謎が解けた。
中河さんは強固な意志を持って、彼なりの正義を貫いたんだろう。
たとえそれが、犯罪だったとしても。
ひかりを助けてほしいと懇願した俺に、彼を責める権利はない。
『しかし、そうまでして守ったのに、困った状況になっている』
『はい?』
初めて、中河さんが眉間にシワを寄せた。
困った状況とは、いったい?
『最近、当時の病院スタッフの周りを嗅ぎまわっているやつらがいるようだ。本庄ひかりの行方を探しているらしい』
ぱっと頭にひらめいたのは、パーティー会場で彼女の姿を見て顔色を変えた国分外務大臣だった。
『彼女の実家……一ノ瀬さんの家も不審者に盗聴器を投げ込まれたと言っていました』
『そうか。危険はひしひしと、彼女に迫っているようだ』
たしかに、その通りだろう。
国分は紫苑が本庄ひかりだと見抜き、その命を狙っている……。