溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
13.モラトリアムの終わり
……どうやら、寝てしまっていたみたい。
体ががくんと揺れて、ハッと目を開く。
かろうじて椅子から落ちるのは避けられたようだ。
目の前には、さっきまで眠っていたはずの新城さんが、こちらをじっと見ていた。
少しの怪我や火傷は負っていたけど、幸い一酸化炭素中毒などにはならず、軽い酸欠で済んだ彼は、既に意識がはっきりしているみたい。
「あ……先生か看護師さん呼びましょうか」
たくさん話したいことがある。
けど、新城さんは目覚めたばかりだし、一応医師に知らせておいた方がいいだろう。
立ち上がり、彼の後ろにあるナースコールのボタンに手を伸ばす。
すると、そっと入院着から出た彼の手が私の手に触れ、優しくそれを阻止した。
「あ、の……?」
行き場のなくなった手をどうしようと迷っていると、ぐいとその手首を引っ張られた。
突然のことに、新城さんの胸に飛び込むような形になってしまう。
気がつけば、私は座ったままの新城さんに、ぎゅっと抱きしめられていた。