溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「麻耶ちゃん、可愛いっすね」

「まあ、あんなドレス着てりゃ、誰でも可愛く見えるだろ」


大西さんと矢作さんがぼそぼそと無駄話をしている。


「ちょっと静かにしてください」


にらみつけると、彼らは苦笑して口をつぐんだ。

その間にも、淡々と式は進行していく。


「最近は地球温暖化など、世界中に様々な苦難が……」


などと、誓いの言葉の途中で神父が趣旨から外れたことを言うので、私まで思わず笑いだしそうになってしまった。


麻耶さんのベールを高浜さんが後ろに流し、背を丸めてキスをする。

ああ……乙女心や女子力といった言葉からはかけ離れた生活をしてきた私から見ても、素敵な二人だ。

きっと彼らも、色々なことを乗り越えて、今日という日を迎えたんだろう。

勝手に想像して胸を熱くしていると、また横から雑音が。


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