溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「あいつらのキスシーン、前にも見たよな」

「違いますよ。しようとしたところを、矢作さんが邪魔したんじゃないですか」

「そうだっけ?」


……そんなことがあったのか?

その現場にいたら、私が矢作さんを殴ってやったのに。


「俺なんか麻耶の記憶見たことあるから、高浜さんがどうやってあいつを抱いたのか、ばっちり……」

「こらっ」


あまりに不謹慎な発言が飛び出しそうだったので、私は思わず新城さんの口をふさいだ。

前の列では班長が私たちのやりとりを聞いて肩を震わせ、篠田さんが大あくびをしている。

もう。この人たち、デリカシーってものがなさすぎる。



< 264 / 279 >

この作品をシェア

pagetop