溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


式のあとは、小規模な食事会が催された。

一般の披露宴みたいに友人の漫才や歌があるわけでもなかったけど、まったりした良い宴だった。


「うう……麻耶さんも高浜さんも、ご両親と血が繋がってなかったのか。でも『お世話になりました。今までありがとう』って花嫁の手紙は、やっぱり泣けるね」


感動しながら会場から帰る道すがら、新城さんと歩く。

明日からはまた厳しい職務が待っている。

他のメンバーは高速を使って車で帰るみたいだけど、私たちは二人とものんびりできるようにと、新幹線で帰ることを選んだ。


「あいつ、ネット小説書いてるからな。人を感動させる手紙なんかお手の物だろ」

「もう……またそういうこと言う。せっかく感動してたのに」


私は手元にある生花でできたブーケに鼻を近づける。

赤いガーベラでできた小ぶりなそれは、ほのかに甘くていい香りがした。

麻耶さんはブーケトスを行わず、直々に私のところにこれを持ってきてくれたのだった。


『一ノ瀬さんしか、未婚の女性がいないから』


と言って笑顔で差し出されたので、もらわないわけにはいかなかった。


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