溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
あの事件のあと、新城さんは私に過去のすべてを語ってくれた。
記憶を失い、一ノ瀬の娘として安穏とした時を過ごしてきた私より、新城さんの方が辛かったかもしれない。
そう思うと、胸が痛くなった。
一ノ瀬の母や葵も、それぞれ私のことを気遣って胸を痛めていたのだろう。
私が記憶を取り戻したことを知っても、彼らは今まで通り、家族として温かく接してくれている。
テロリストを雇い、火事や爆発物の密輸まで行ってしまった三田さんは、警察に逮捕された。
面会に行くと、『自分がやってしまったことですから』と、素直に罪を認める意志を憔悴しきった顔で話していた。
あの場で死なせてあげた方が、彼は幸せだったのかもしれない。ちらとそんな考えが頭をよぎった。
けれど、何度同じ状況におかれても、彼を見捨てるという選択は、私にはできなかっただろう。