溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「えっ?」
突然の話題転換についていけなかった私を見て、彼は苦笑する。
「……俺、随分前にプロポーズしたはずだけど?」
プロポーズ?
もしや、『俺たちの結婚はいつにしょうか』という相談なの?
「あ、あれ? 私が赴任した当日に壁ドンした、あれでしょ? あれは、私を危険から遠ざけるための冗談だったんじゃ……」
「はあ?」
今度は新城さんが首をかしげる番だった。
『信じられねえ、こいつ』と目が言っている。
「それはそうだけどさ。お前、そういうこと全然考えてねえの?」
「いや、そういうわけでは……」
全然考えないわけではない。
彼のことは好きだし、人生のパートナーとして連れ添っていくのは、彼以外いないと思っている。
だけど、突然、婚姻届けを出して『さあ、結婚しましょう!』という具体的なイメージまではなかった。