溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「えっ?」


突然の話題転換についていけなかった私を見て、彼は苦笑する。


「……俺、随分前にプロポーズしたはずだけど?」


プロポーズ?

もしや、『俺たちの結婚はいつにしょうか』という相談なの?


「あ、あれ? 私が赴任した当日に壁ドンした、あれでしょ? あれは、私を危険から遠ざけるための冗談だったんじゃ……」

「はあ?」


今度は新城さんが首をかしげる番だった。

『信じられねえ、こいつ』と目が言っている。


「それはそうだけどさ。お前、そういうこと全然考えてねえの?」

「いや、そういうわけでは……」


全然考えないわけではない。

彼のことは好きだし、人生のパートナーとして連れ添っていくのは、彼以外いないと思っている。

だけど、突然、婚姻届けを出して『さあ、結婚しましょう!』という具体的なイメージまではなかった。


< 273 / 279 >

この作品をシェア

pagetop