溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「仕事を続けたいなら、続ければいい。俺がサポートするから」

「は、はい」

「だから、今すぐでなくてもいいから」


四月の風が、さらりと青くなりはじめた木の葉を揺らした。

聖さんの髪が、陽光を受けてて蜂蜜色に光る。

ごくりと唾を飲み込むと同時、その形の良い唇が動いた。


「結婚しよう」


少し緊張していたような顔が、ふっと笑った。

その半月型になった瞳を見て、ふと脳裏に幼いころの記憶が甦る。




『大きくなったら、お兄ちゃんと結婚するの』


あの頃、私はそう思いこんでいた。

そして深く考えもせず、本人にそう宣言したことがあった。

聖お兄ちゃんは困ったように笑ったけど、決して否定したりしなかった。


『いいよ。じゃあ、大人になって、まだひかりが俺を好きだったら、結婚しよう』

『うん!』



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