溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
……ああ、そうだった。
私、随分前……本当に遠い昔に、プロポーズしてもらっていたんだ。
あの時は、半ば無理やり言わせたのかもしれない。
けれどその約束は、長いときを経てこうして果たされようとしている。
「……ふふっ、あはは……」
何て恥ずかしい、小さな頃の私。
淡すぎる初恋が鮮やかによみがえる。
「おい、何笑ってんだよ」
「ううん、違う、おかしいんじゃないの」
照れた顔で頭を小突いてくる彼のゆるい拳を、甘んじて受ける。
「ねえ、聖さん。人って、予想外のことが起きると、笑えるんだね」
「は?」
私の頭の中で起きたことがわかるはずもない彼は、眉をひそめた。
そんな彼の耳元で、私は背伸びして囁く。
「私、大人になって、あの頃よりもっとあなたのことが好きになったの」
ねえ、抱きしめて。もう、嫌がったりしないから。
指輪も、ドレスも、何もいらない。
あなたを守る拳銃と、弾丸。
それと、あなたがいればいい。