溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「なー、親父が襲われたって本当なの?」
「本当ですよ。メールしたでしょう」
「だって、スマホなんか見てないもん。会議中だよ?」
寝てたくせに。
そう思ったけど、私たちは黙っていた。
「とにかく、詳しい話は自宅でしましょう。SPの皆様、どうかよろしくお願いいたします。私は坊ちゃんの秘書の、三田でございます」
秘書というより、執事みたい。
三田さんはよほどこの馬面議員に苦労をかけられているのか、額が光を反射して光り、少なくなった頭髪がこめかみの上と言うありえない位置から折り返されていた。
大きな銀縁メガネをかけている。
その人は、私の方をちらと見て、気まずそうに新城さんに話す。
「あのう……男性のSPさんは、もう他にはいらっしゃらないんでしょうか」
「どういう意味ですか?」
「あの、女性の方だと……、ええと、あの……」
女性が男性を守れるわけがないと言いたいのか?
ムッとすると、新城さんが冷静な表情で三田さんに返す。
「ご安心ください。SPは女性でも男性と同じ条件をクリアし、同じ訓練を受けています。実力で劣るということはありません」
新城さんが、私を庇ってくれた……。
マルタイを安心させるためかもしれないけど、不覚にも嬉しい。
「いえ、そういうことではないのです」
「では、何が問題だと?」
「ええと……」