溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「……でかっ」
車に乗り、国分議員の自宅に着くと、大西さんが上を見上げて呟いた。
目の前にあるのは、超高層マンション……俗に言うタワーマンションというやつだ。50階は越えていると思われる。
「まさか、部屋までついてくるの?」
「もちろん」
「40階までテロリストがくるとは思わないけどね」
そりゃあ、忍者みたいに外壁を登ってはこないでしょうけど、相手がプロだった場合、セキュリティも解除して忍び込んでしまう場合も考えなければ。
「さて、俺は着替えて出かけるから。あんたたち、どうするの?やっぱりついてくる?」
地下の駐車場に降り立った私たちに、彼はそんな信じられないことを言う。
「どちらに行かれるのですか?」
「お前も男なら、無粋なこと聞くなよ」
国分議員は、質問した新城さんににやりと笑って答えた。
無粋なことを聞くなということは……女の人のところか。
「いつテロリストに狙われるかわかりません。外出は控えてください」
そう言われているのに、国分議員はエントランスに向かってスタスタと歩き出す。
ちなみに秘書の三田さんは四六時中一緒にいるわけではないらしく、議事堂前で別れ、自宅へと帰っていった。