溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「って言われても、約束しちゃってるし。それに狙われたのは親父であって、俺じゃないし」
「敵の目的が外務大臣だけかどうか、まだわかりません」
「大丈夫だって。恋する女の子の期待を裏切るなんて、可哀想だろ?」
いい歳こいて、何言ってるんだろ。
胸がむかむかして、吐き気ににたものを感じる。
「それとも~、一ノ瀬ちゃんが彼女の代わりをしてくれるって言うんなら話は別だけど?」
また私に触ろうとした議員の前に、新城さんがさっと出る。
助かった。恋愛偏差値が低いせいか、どうも私はこの手の人のうまいかわし方がわからない。
ぶっとばしていい相手なら、即座にそうしてやるんだけども。
「そんなににらむなよ。じゃあいいよ、このまま行くから」
この人、危機感がなさすぎる……デートなんて、いつだってできるじゃない。事件が解決したあとにいくらでもすればいいのに。
「……ん?」
ずっと黙っている大西さんの方を見ると、なぜか彼は厳しい顔をして周りを見回していた。
どうしたんだろう。
眉根を寄せて、にらむように辺りを見る、こんな表情初めて見た。
「新城さん、足音が聞こえます」
そう知らせる小さな声が、かろうじて私の耳にも届く。
その瞬間、3人の男が、柱の影から現れた。