溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


3人ともTシャツに黒っぽいパンツ、ゴム底の靴を履いている。


「誰だ」


新城さんが国分議員の前に出ると、場の空気が一瞬にして張りつめた。

私と大西さんは両サイドを固める。

守られる本人は、まだ何が起こっているかわかっていないのか、私たちの顔をきょろきょろと交互に見ていた。

三人の男は何も答えず、だぼっとしたパンツのポケットや着ているベストに手を入れ、ゆっくりと何かを取りだす。

薄暗い駐車場の中でもきらりと光るそれは、刃渡り30cmほどのサバイバルナイフだった。

襲撃だ。

班長に無線で連絡する暇もなく、敵がじりじりとこちらに迫ってきた。

新城さんは腰から警棒を抜く。

持ち手部分のボタンを押すと、それはシャキンと音を立てて伸びる。

もともと三段階に伸縮する金属製の黒い警棒は、全長60cm弱になった。

それを構えるのを待たず、男が勢いよく新城さんへと駆けてくる。


「新城さん!」


私の声よりはるかに高い音が、駐車場内に響く。

突き出されたナイフを、警棒で打った音だ。

新城さんは敵の刃を横に払うと、がら空きになった相手の胸に警棒を突き出す。


「速い……!」


敵はそれを避けようと背をそらし、勢い余って体のバランスを崩した。

その隙をつき、新城さんの手が飛ぶように素早く動く。

警棒の先は敵の手首を打ち、ナイフを落とさせた。

カランカランと、金属音が冷たい床に広がる。


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