溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「うわあ……紫苑ちゃん、強ぉい」
大西さんが手錠をかけた敵に跨ったまま、感嘆の声を上げる。
「……やるじゃないか」
いつの間にかグレーTシャツの男を倒した新城さんが、驚いたように言った。
敵はあおむけに倒れていて、その喉を新城さんの警棒で押さえられている。
乱れた息を整えている間に、最後の敵も気絶した。
新城さんは彼にも手錠をかけると、すっと立ち上がる。
「わかりましたか。あなたにも危険が迫っているんです。これ以降、勝手な行動は慎んでください」
冷たいとも思える口調で、新城さんにたしなめられた国分議員は、すっかりおびえた表情でこくこくとうなずいた。
「怪我はないか、一ノ瀬」
「はい、大丈夫です」
「お前を見くびってたことを謝るよ。さすが、新人でもSPだ」
新城さんは、そう言うと……。
綺麗な二重の目を細め、口元に笑みを浮かべた。
彼の右手が私に向かって伸ばされるのが見える。
その手は優しく、私の頭をぽんぽんとなでるように叩いた。
え……なにこれ。
抵抗するのも忘れて固まっていると、その手はすぐに離れていった。