溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「えっと……」
その聞き方だと、既に一緒に休憩を取ることが決まっているみたいなんですけど。
さっきテロリストと対峙したばかりで、肉体的にだけではなく、精神的にも疲れた。
できれば誰にも気を遣わず一人でまったりしたい……。
「別に希望がないなら、ついてこい」
「ああ……ええと……」
「早く。いつ招集されるか分からないんだから」
ぐい、と強引に手を引かれる。
「わあっ」
驚いて思わず声を上げると、新城さんが振り返る。
「どうした?」
「いや、あの」
まさか、男の人と手を繋いだのが、高校生の時の林間学校のキャンプファイヤーのとき以来だとは言えない。
そのせいで、妙に緊張してしまうことも。
「離してください。自分で歩けますから」
顔が火照る。手のひらが汗ばむ。
どうして……手を繋いでいるだけなのに。
ぎゅっと握った手のひらに、豆があるのを感じる。
初対面の握手のときには、静電気のような感覚にびっくりするばかりで、気づかなかった。
これはきっと、警棒の訓練をした痕だ。