溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「お前……もしかして、照れてるの?」


ごつごつした手には似合わない甘いマスクで新城さんがそんなことを聞くから、ますます頬が熱くなってしまう。


「はは、なんだよお前。テロリスト投げ飛ばしたくせに、手繋いだくらいで動揺するなよ」

「……うぅ……」


うるさい。ムカつく。

なのに、どうして私はこの手を振りほどけない?


「可愛いやつ」


まるで月光のような柔らかな笑顔で、そんなに愛しそうに見つめないで。

ぐっと首を下げてうつむくと、またぐいと手を引かれる。


「行こう」


彼に引かれるまま、私は歩いた。

できるはずの抵抗をしない私を、新城さんはそれ以上笑ったりしなかった。

歩くうち、なんだか不思議な感覚が胸の中に産まれる。

前にも、こんなことがあったような……。

こんな風に男の人と歩いたことは、さっき思い出した通り、ただの一度もない。

じゃあ、幼い日に父や母と歩いたことを思い出したんだろうか。

その感覚を再生しようとしたけど、うまくできなかった。

どうしてか考える前に、新城さんの足が止まる。

どうやら、目的地に到着したらしかった。


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