溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「どうやってって……ただ、見るだけです。手とか表情とか、相手の筋肉や骨の動きを見ていれば……たとえば、次にナイフを振り上げて下ろそうとしているのか、横になぎ払おうとしているのか、そういうことがわかります」
どうしてわかるようになったのかは、私にはわからない。
ただ、気づいたときにはわかるようになっていた。
あれは中学生のときだったか。
所属していたバスケ部の試合で、相手校の選手の足の動きを見ていたら、自然に次の動きが予想できるようになっていて、たいそう役に立った。
じゃんけんのときもそうだ。
相手の出す手が一瞬先にわかるから、今まで負けたことはない。
それ以外では特に使うこともない能力だったけど、テロリストと直接対峙するSPには有効な特技だろう。
「それ、上官に相談したことあるか?」
「相談というか、SPに志願する際に、特技として申告しましたが」
「なるほど。だから特殊班に配属されたのか」
新城さんは納得したようにうなずくと、ぱくぱくとあっという間にオムライスを平らげていく。
「あの、今のどういう意味ですか」
“だから、特殊班に配属された”って……特殊班って、特殊な任務に就く班って意味じゃなかったの?なにか他の意味があるの?