溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「早く食えよ。休憩なくなるぞ」
……はぐらかされた。明らかにはぐらかされた。
いや、特に何の意味もないということなのか。
とりあえず、冷めないうちに食べてしまおう。質問はまた今度で良い。
このあとはまた警護に戻らなきゃいけないんだから、力をつけないと。
スプーンをぐっと持ち直し、新城さんに負けないように、大きな口を開けてオムライスをほおばった。
あと少しで完食だというとき、先にスプーンを置いた新城さんがふっと笑った。
「子供かよ。ついてるぞ、ここ」
そう言って、自分の頬を指さす。
うそ。まさか、お米がついてる?それともソースが?
慌ててハンカチでぬぐうけれど、ファンデーションが少しついただけだった。
「ばか。こっちだよ」
すっと、新城さんの手が伸びてくる。
かと思うと、その指先がそっと、まだ拭いていない方の頬に触れた。
「あ……」
なんてこと。新城さんは私の頬についているお米をつまむと、そのまま口の中に入れてしまった。
その唇を見つめてしまい、余計に恥ずかしくなる。
どうしてこんなことするんだろう。
「嫌なら避ければいいのに。人の行動が読めるなら」
そんなのわかってる。
けど、新城さんはいつも私の想像の斜め上を行ってしまうんだもの。