溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


『どうしたんですか。体調でも悪いんですか?』


現場に戻った私に、優しく声をかけてくれたのは高浜さんだった。

よほどひどい顔をしていたのだと思う。新城さんのせいで。

私は大丈夫だと言ったのだけど、初めての警護で、テロリストと対峙したこともあり、とっても心配されて自宅に帰らされてしまった。


『こちらは俺たちで大丈夫ですから。明日体調が良ければ、午後から出勤してください』


一度重要な警護につけば、何日も家に帰れない日もあると聞いていたのに、拍子抜けした。

高浜さんが優しすぎるのか、単に私が足手まといなのか。

それはわからなかったけど、日付が変わる前には自宅に着き、温かいお風呂に入ることができた。

けれど、眠気はなかなか襲って来ない。

初警護の興奮のせいか……それとも。

ふと気を抜くと、至近距離で私を見つめていた新城さんの顔を思い出してしまう。

そして、たった一瞬だったキスの感触も。

なんてこと。テロリストより、先輩SPの方が強敵だ。

頭から新城さんを追い出そうとすればするほど、今日一日で交わした会話や彼の色々な表情を思い出してしまう。


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