溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「……や、ごめん。とにかくよろしく」
新城さんは軽く首を振ると、私に向き直り、そっと手を差し出した。
その親指の付け根には、うっすらと何かで切ったような傷がある。
任務中に負った傷だろうか。
私も、そのうちこうして体中に傷が増えていくのだろうか。
「よろしくお願いします」
雑念を払い、差し出された手をそっと握る。
その瞬間。
「……っ……?」
まるで静電気が起こったような、小さな衝撃が指から手首に走った。
バチン、と音を立てたようにも思えたけど、そう感じたのは私だけじゃないみたい。
見上げると、新城さんも驚いたように綺麗な二重の目を丸くしていた。
「お前、やっぱり──」
ぐ、と握手したままの手に力を込められる。痛いくらいに。
「おい、新城。個人的な話は後にしておけよ」
ぽんと矢作さんに肩を叩かれ、新城さんはハッとした表情で私の手を離した。
何なの?気味が悪い。
きっとにらむと、新城さんは「ごめん」と一言謝った。