溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


この時間は、父はもうとっくに出勤しているはず。


「二人とも口をそろえて、同じことばかり言うんだもんな……」


警視庁に入庁するときも、機動隊に配属された時も、そしてSPになると言ったときも、両親は『危険だからやめなさい』としか言わなかった。

まあ親だからこそ、実の娘に傷がつく前に危険から遠ざけたいと思うんだろうけど。


あまりにも口うるさいので、1年前にアパートを借りて家を出た。

家族のことは普通に好きだし、仲良くしたいと思っているけど……だからこそ、適度な距離を置いて正解だったと思う。昔より、イライラすることが少なくなった。


階段を上がっていき、2階にある収納部屋に入る。

たしかここに、アルバム類が置いてあるはず。

見覚えのある箱を開くと、学生時代から小学生時代のアルバムはすぐに見つかった。

えっと……これより前のものは?

その箱の中にはないみたいだったので、違う箱を探ってみる。

けれど、小学生時代の工作や自由研究、中学時代の部活で撮った集合写真や柔道の大会でもらったトロフィーなんかがゴロゴロ出てくるばかり。

赤ちゃんから幼稚園の時代の写真が一枚もない。


「どこ?」


あるはずのないものがないと、気になる。

次から次へ箱や収納ケースを開けていくけど、なかなかアルバムは見つからない。

腹の虫が鳴って時計を見ると、もう11時になろうとしていた。


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