溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「ちぇっ。ところで、久しぶりに帰ってきて何してるの?豪快に散らかしたね」

「そうだ、いいところにきた!葵、この部屋片付けておいて。私は今から仕事だから」

「ええーっ!?」


バッグを持って立ち上がると、葵はすがるように私を見つめる。

すまない、葵。私を愛しているなら、四の五の言わずに片付けておいて。


「そういえば……葵、あんたの産まれたころの写真ってどこにあるの?」

「……え?」


突然の質問に、葵は目を見開く。


「私のもないんだよ、小さいころの写真。どこか他のところにしまってあるのかな」

「さあ……。でもどうしていきなり小さいころの写真なんか?」


どうしてと問われれば、はっきりした理由はない。

ただ思い出せないから、写真でも見てみようと思っただけ。

思い出せない……そういえば、葵はどんな子供だっけ?

ひとつ違いだから、同じ幼稚園に通っていたような記憶があってもおかしくないのに、どうしても思い出せない。

記憶の中にある一番小さい葵の姿は、せいぜい年長くらいだ。


どうしてだろう?ただの物忘れにしては不自然じゃない?

同時期の記憶が二人分ないなんて……。


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