溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「申し訳ありませんが、この事件が解決したら、あなたと一ノ瀬は何の関係もなくなりますので」
新城さんが議員の手を離して言う。
「警視庁SPは、一般議員の警護はしないんだっけか。じゃあ警視庁なんか辞めて、民間SPになったらいいじゃない。今の倍は払うよ」
これは、ヘッドハンティングというやつか?
お給料が倍もらえるのは嬉しいけど、気苦労は今の6倍くらいになりそう……。
「お坊ちゃま!何してらっしゃるんですか。早くお部屋に入ってください!」
気づかなかったけど、どうやら高浜さんのかげに隠れて見えなくなっていた秘書の三田さんが叫ぶ。
そうだ、こんなところでテロリストに襲われたら大変。
他の宿泊客に見られたら、居場所が漏れてしまう可能性もある。
私たちは慌てて部屋の中に入った。
高浜さんと矢作さんはそのまま、部屋の外で警備中。
大西さんは休憩終了後、ホテル周辺の見回りだ。
「あー腹減った。ルームサービス頼もうかな。一ノ瀬ちゃんも何か食べる?」
「けっこうです」
あっさり断ると、国分議員は悲しそうな顔をする。
「一人で食事しても味気ないじゃないか」
「三田さんも新城さんも私もいます。おひとりではありません」